上原ゼンジの写真──世界との出会いを記録する

私は、世界とのあいだに生まれる小さな不思議を記録しています。
道路に落ちたペンキの跡、風や時間が描いた壁の模様、アスファルトを破って芽吹く植物。
人が意図せず残した痕跡や、自然の物理的・化学的作用が刻んだ痕跡。
それらは作為を離れて現れた造形です。
こうした世界との出会いを記録するために、
自作の装置で知覚をずらす「光の実験室（知覚変換装置）」、
身近な素材を異化して撮る「日常の不思議（生命の翻訳）」、
そして無作為の芸術を観測する「トマソンの友人（無作為の仕事）」
という３つのプロジェクトを展開しています。
いずれも、私と世界という二元論ではなく、私と世界との「あいだ」で起こる共振の記録です。
私が共有したいのは、まず驚きです。そして、世界と出会い、少しだけ豊かに生きる方法です。
興味のあるテーマからご覧ください。

光の実験室（知覚変換装置）

世界の見え方を少しずらす装置を開発しています。
宙玉レンズ、手ブレ増幅装置、万華鏡写真など。
光の通り道をずらし、鏡で反射を重ね、
センサーに当たる光の角度をランダムに変えることで、
意図の中に偶然を介入させます。
知覚のあり方を少しずらして可視化し、世界を別の角度から観測します。

日常の不思議（生命の翻訳）

身の回りのものや日常の光景の中に、別の姿を発見しています。
たとえば、うずらの卵の中に惑星や太陽を見出したり、
クラゲ、キノコ、ドクダミなどをクローズアップ撮影で可視化します。
日常を異化し、不思議を引き出す作業です。
ウズラの卵を横からではなく、下から撮影すると丸くなる。
さらにネガに反転すると色も補色になり、青い惑星が現れた。

トマソンの友人（無作為の仕事）

超芸術トマソンから発展させ、
意図や作為によらずに現れたものを記録しています。
人が意図せず残した痕跡や、自然の物理的・化学的作用が刻んだ痕跡、
都市に息づく生命の営み。
そういったものに呼びかけられ、記録します。
誰かが壁にぶつけた野球ボールの跡。
ボールをぶつけた人はもちろん作品を作ろうとしたわけではないが、
こんな偶然の痕跡を探している

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★関連プロジェクト

手づくり写真工房

レンズや鏡を自作し、撮影の工夫や技術をオープンにしています。
写真を楽しみながら、その可能性を広げていく実践の場です。
万華鏡や宙玉など、身近な素材から装置を作り、
写真の楽しみ方を共有しています。
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