──無用のものから世界を観測する
私が写真に興味を持ったのは、赤瀬川原平の「超芸術トマソン」がきっかけだった。
それは街を歩き、役に立たなくなった構造物を観察し、記録するという芸術である。
作者のいない芸術。そこにあるのは、ただ観察する者だけという発想だった。
私はその精神を受け継ぎ、トマソンの周囲、さらにその外側へと観察の範囲を広げている。
作為を離れたものに、世界の働きが見える──
このプロジェクトでは、そんな無用の美を集めた“仲間たち”を紹介する。
超芸術トマソン
超芸術トマソンの精神を受け継ぎ、その境界にある曖昧な物件を観察する。
トマソンか否かよりも、不思議を味わうことが主題。
下手物推し
俗っぽく、奇妙で、少し笑ってしまうようなものたち。
下手物の中にも、世界のセンスがにじむ瞬間がある。
偶然の痕跡
風や時間、光や雨がつくり出した無作為の模様を記録する。
人の手を離れた「世界の描線」が現れている。
自然の仕事
植物や自然現象が見せる、意図なき造形の数々。
人の行為よりも静かで力強い、生命のリズムを観測する。
すきま植物誌
コンクリートの割れ目や街のすきまに根づく小さな植物たち。
人間の世界と自然の世界が交わる境界を記録する。










