築地にはたまに行くことがあったが、いつも場外で寿司を食べたり食材を買ったりするだけで場内に入ったことはなかった。そして豊洲に移転する直前のタイミングでようやく場内に潜入することができた。
カメラを持って場内をうろつく私の目に留まったのはマンホールの蓋だった。とくにマンホールの蓋好きというわけではないのだが、その経年変化の具合が私のハートを掴んだ。
築地の場内には商品を運ぶためのトラックやターレー、大八車の類いが縦横無尽に行き交っていたが、そういう物に轢かれ、擦れ、長い年月のうちにボロボロになったのだろう。普通であれば交換されてしまうような傷み具合だが、築地場内ではそれが放置され、いい感じに仕上がったマンホールパラダイスになっていた。
私は興奮してキャーキャー言いながら（心の中でね）撮影したのだが、おいしい寿司を食べて帰ってきたらすっかり忘れてしまい、2年近く写真を寝かせてしまった。
しかし久しぶりにその写真が目に留まり現像してみたら、撮影時の興奮が蘇ってきた。そしてキャーキャー言いながら（心の中でね）Photoshopで丸めてみた。丸めることに深い意味はないが、その蓋のテクスチャーに宇宙的なものを感じ、惑星のように表現してみたくなったのだ。
かくして築地場内の人孔惑星群を捉えることができた。元のマンホールはすでに廃棄されてしまっただろうから、ありし日の貴重な姿をここに記録できたということだ。
