トマソンの友人
Ⅰ 序章:世界に取り残されたものたちへ
私の写真の出発点は、赤瀬川原平の「超芸術トマソン」にある。街に存在する、すでに用を失った構造物を観察し、撮影・記録していくうちに、私は“作る”よりも“発生に立ち会う”という態度に引き寄せられた。
「観察者はいても制作者はいない」という発想は、美術の枠組みを揺さぶり、私の眼を現場へと向け直した。やがてトマソンの外側にも、同じ無作為の美を見いだす。偶然の痕跡、自然の作用、都市のすきまに生きる植物、日常に紛れた無意図の形。
私はそれらを発見するのではなく、出会い、記録する。解を求めずに不思議を味わい、あとから振り返ることで輪郭を確かめる。ここに並ぶのは、そんな“無作為の発生”のアーカイブである。
